【もっとふく育県②】福井市の子どもにご飯を届ける “移動式” こども食堂|くるくるごはん804
取材ライター:虎尾ありあ
「福井市の全ての子どもに食事を届けたい 」
くるくるごはん804は福井市内のさまざまな会場に出向いて子どもたちや親子に食事を届ける移動子ども食堂です。運営スタッフは福井市内の4名の女性で、2022年の11月に活動をスタートさせました。
「子ども食堂は子どもが一人で歩いて行ける範囲に点在しているのが理想だとされています。福井市には52の小学校がありますが、こども食堂は2022年時点で10か所程度しかありませんでした。わたしたちが食堂を1箇所増やしたとしても、まだまだ足りませんよね。
そこで、大人であるわたしたちが移動すればいい、と発想を切り替え、移動するスタイルを採用することにしました」代表の藤井さんは当時を明るく振り返ります。
子ども食堂はキッチンがある公民館やフリースペースを使用することが多く、地域からオファーをもらったり、藤井さんたち自身で公民館を借りたりして開催しているそうです。2023年の6月からは光陽地域の「だん・だん」を定期的に利用できることになり、移動先で1回、「だん・だん」で1回の1カ月に計2回子どもたちを招いています。
くるくるごはん804の目標は福井市の52の小学校区全てに子ども食堂ができること。「いろいろな地域に出向いて食堂を開くことで、その地域の人たちが自分の地区でも子ども食堂をやってみようと思うようになるかもしれない」と活動を進めているそうです。
くるくるごはんに集まる人たち・支える人たち

子ども食堂開催のお知らせは、その地域の保育園や幼稚園、小学校、中学校、高校にチラシを配って知らせています。できる限り予約制にはしていません。
「当日子どもがふらっと来れるように可能な限り予約を取らずに実施するようにしています。参加者が誰もいないリスクは正直ありますけど、予約していないから行けない状況は作りたくないなぁと。誰も来なかったらどうしようと毎回ドキドキして待っているので、ひょこっと子どもが来てくれたときは本当にうれしいです」
開催日の会場は、子どもだけのグループ、親子連れ、一人暮らしの高齢者などで溢れ、知らない人同士が隣に座っても自然に会話が生まれるといいます。親でも親戚でもない「ななめの関係」の大人と話ができることは、子どもたちにとって心地よいつながり方なのかもしれません。
「生後1カ月くらいの赤ちゃんと、上の子と、一緒に食事をしているお父さんとお母さんもいました。赤ちゃんを連れてレストランには行きにくいけど、ここなら気兼ねなく食事ができるのかなと。いろんな人が来れる場所になっていることがうれしいです」
くるくるごはんの活動は、いろいろな人の関わりや、食材や資金の寄付で継続が叶っています。ボランティアスタッフの中には大学生や高校生もいるそうで、移動先にもバスで参加してくれるといいます。いずれはキッチンカーを構えて、キッチンがない場所にも移動できる子ども食堂を目指しているそうです。

お母さんたちにもっと気楽に子育てをしてほしい
今まさに子育てに奮闘しているお母さんたちに、藤井さんは「息抜きをしに食堂に来てほしい」と声をかけます。
「わたし自身、子育て期間は我が子をしっかり育てなければと責任感を背負って肩に力が入っていました。もう少し気楽に子育てに向き合えれば、子どもとの時間をもっと楽しめたかもしれないなと今になって思います。
ちょっと息抜きがしたい、お昼ごはん作りを1回スキップできる、家から出て誰かと話したい、そんな理由で来てもらって大歓迎です。子どもが増えれば場が明るくなりますからね。くるくるごはんに来てくれる人や支えてくれる人の存在があるからこそ、わたしたちにとってもここが居場所になっています」
「呼んでもらえれば喜んで行きます」と明るく話す藤井さん、804は「始まるよ(はちまるよん)」の掛け声を表しているそうです。地域の枠を飛び超えるフットワークの軽さが、スタッフも参加者も心地よい居場所を作りあげているようです。
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【移動子ども食堂 くるくるごはん804】
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ライターのコメント
地域に属さない子ども食堂だからこそ、気楽に足を運べる感覚は子どもも大人も少なからずあるのではないでしょうか。藤井さんたちのオープンな雰囲気と、くるくるごはん804が運んでくるゆるやかな居場所が、子育てに奮闘するお母さんたちの心を軽くしてくれそうだと感じました。