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【もっとふく育県⑤】男性育休を「当たり前」に!企業の挑戦を応援|パパ育休100%チャレンジ<前編>

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「もっとふく育県」では、より良い子育て環境の実現を目指して活動している県内の団体や取り組みにスポットを当てて、活動の中身や思いを探ります。第5回目は、福井市の「パパ育休100%チャレンジ事業」のモデル企業を取材しました。男性社員の育休取得を促進するためにどのような実践を行ったかをお話していただきました。

※次回第6回では、実際に育休を取得した(取得予定者含む)男性社員のインタビューでリアルな声をご紹介します。ぜひ併せて読んでみてください。

取材ライター:虎尾ありあ

坂井市在住のフリーライター/3歳・5歳の2児の母。「福井の子育てをさらに良くしたい」とやりがいや使命感を持ち、多方面で活躍している方の想いを届けていきます。思いに共感したり、活動に興味を持ったりした方はぜひアクションを起こしていただけるとうれしいです。
 
 

「パパ育休100%」にチャレンジする福井市

パパ育休100%チャレンジ事業は、男性の育休取得を促進するための企業の課題解決や制度構築を支援する福井市の事業です。男性社員の育休取得が「当たり前」な企業風土を目指し、福井市の未来づくり推進局・女性活躍促進課の主導で実施されています。福井市内の社員数500人未満の企業を対象にモデル企業を公募し、2023年9月に3社が「パパ育休100%チャレンジ宣言」をして、取組がスタートしました。

【パパ育休100%チャレンジモデル企業】
・株式会社福地
・ジビル調査設計株式会社
・永和住宅グループ

3社には2024年2月まで約半年間にわたりパパ育休アドバイザーの社会保険労務士などが訪問し、それぞれの企業の現状や課題に合わせたサポートが行われました。

モデル企業3社の取組をご紹介

モデル企業の各社に、実践内容や取組を進める社内の様子を伺いました。

株式会社福地:部署を超えた柔軟な人事体制を目指して

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※ミーティング中の「設計チーム」のメンバー。テレビ取材が入っていました。

株式会社福地の課題は、技術職ならではの属人化しがちな業務を会社全体でどのように分担していくか、ということでした。柔軟な業務体制が実現すれば、育休取得者が長期間会社を離れても残りのメンバーで対応していくことができるようになります。

同社では、実際に育休取得予定者がいる「設計部チーム」と、会社全体の施策を立案するために部署を横断してメンバーを集めた「工程チーム」の2チームを設け、課題を洗い出し、解決策が話し合われました。

「工程チーム」では、部署間のコミュニケーションが少なくなりがちな現状を改善するため、全社員が利用する食堂に掲示板を設置しました。「掲示板には、飲み会の誘いや、スノーボードの誘い、子ども服いりませんか? などなんでも書いてOKと周知しています」と話すのは、自身も子育て真っ最中の江守さんです。

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※食堂に設置された掲示板。その名も「ふくちったー」。

「家具を作る工程ごとに部署が分かれているので、どうしても部署を越えたコミュニケーションが少ないのが気になっていました。普段から会話をしていれば、別の部署が忙しそうなときに「手伝おうか」と声をかけやすくなる。そういった積み重ねが、柔軟な業務体制の第一歩になると考えています」(江守さん)

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※アドバイザーと笑顔で話す江守さん。自身の子育て経験を活かし、積極的にアイデアを発信していらっしゃいました。

「設計チーム」では、育休を取得するメンバーがいます。出張や顧客対応で忙しくなりがちな同部署では、社員一人ひとりの業務を細分化して、個人に忙しさが集中しないよう調整や引継ぎを進めているそうです。

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※「育休について考えることが体制の見直しになった」と話す設計部門の漆崎さん。

「育休をテーマに、どうすれば働きやすい職場になるのか社員みんなで向き合えたことが良かったと思います。どこに課題があるのかを確認し合ういいきっかけになりました。時間はかかるかもしれませんが、部署間で業務を連携するための勉強会を開いたり、普段から他部署の仕事を覚えたりしていくことで、実現に近づくと思います。ほかの部署の仕事がわかるようになることは、設計の仕事自体の質も上がるのでメリットが大きいですね」(漆崎さん)

2023年7月に同社の取締役に就任した遠藤社長は「パパ育休100%チャレンジを切り口に、働き方改革を進めたい」とモデル企業にエントリーした当時を振り返ります。介護や子育てなど、いろんな背景を持つ社員たちが幸せに働くためにはどうすればよいか、創業115年を迎える会社として、働き方を見直すために舵を切ったチャレンジでもあったそうです。

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※就任後すぐに「パパ育休100%チャレンジ事業」にエントリーした遠藤社長。

「育休は、OJTを超えた会社の外で学ぶ良い機会になると考えています。会社の外のコミュニティで学んだ知見を会社に活かしてもらえるのであれば、企業にとってこんなにいいことはないのではないでしょうか。社員の働きやすさや幸せを大切にして、ものづくり企業として世界に発信できる家具作りを続けます」(遠藤社長)

 

ジビル調査設計株式会社:収入減のネックを解消し第一号取得者を輩出

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※取材に応じてくださった取締役営業部長の西川さん。

男性社員の育休取得実績がないなか、チャレンジの期間中である2023年12月に第一号者の取得を実現したジビル調査設計株式会社。短期間の間に育休を推進できた理由は、スピード感をもって会社の制度を整備して、対象者の不安を解消できたことと振り返ります。

取得対象者に面談での育休取得の希望を聞いたときは、「できれば取りたいけど給与が減ることに不安がある」という答えが返ってきたそうです。ちょうど同じタイミングでパパ育休セミナーが開催されていたこともあり、「パパ育休100%にチャレンジをするなら今だ!」とエントリーを決意しました。

対象者が不安を感じていた収入減少については、取得時期の調整や国の助成金・県の補助金の活用に加え、会社からの補填制度を整備して、パパ育休アドバイザーと手取り金額のシミュレーションを重ねてクリアにしていったそうです。「チャレンジにエントリーしてアドバイザーに入ってもらったことで、予想以上のスピード感を持って実現できた」と西川さんは話します。

リクルートに力を入れて、7年連続で新卒採用を行っている同社。「パパ育休100%チャレンジ宣言」によって、若い世代に企業の姿勢を示せたこともチャレンジの副産物でした。若い社員が安心して働ける環境を整えることは、会社自体のアップデートになったそうです。

「仕事とプライベートもどちらも大切にする、というのは今や当たり前の価値観。働きやすい会社だと思ってもらえれば、会社に愛着がわいて、長く働いてもらえると思う。そういう環境の中で、おのずと使命感が湧いてくれば、お客さまにも満足してもらえる仕事ができる。次の世代への指導も、働き方もますますブラッシュアップしていきたいですね」(西川さん)

永和住宅グループ:社員の「ためらい」を会社が後押しできるように

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※経営チームとして育休推進をリードする天谷さん。

永和住宅グループは、男性社員の育休について、グループ会社間で実績や温度感にばらつきがあることを課題に感じていました。数年前から推進している男性育休を全社に広げるため「パパ育休100%チャレンジ」を宣言しました。担当の天谷さんは、チャレンジにエントリーしたことで、会社をあげて大々的に育休推進に取り組む姿勢を示せたことに意義を感じているといいます。

「自分たちだけで育休取得を勧める発信をしていても、なかなか全社員には届かず、行き詰まりを感じていました。チャレンジの取組の中でアドバイザーが育休について直接説明する全社向けの研修を開いてもらったことで、グループ全社に広く男性育休を広めるきっかけになりました」(天谷さん)

2024年3月から育休を取得する予定の大南さんは、当初は育休を取得しない予定だったそうです。大南さんは自身の育休について、「妻に育休のことを相談したら、実家が近いから取らなくてもいいよ、と返事があったんです。自分のキャリアのことも考えて、別に育休を取らなくてもいいか、と最初は思っていました」と話します。大南さんの考えを変えたのは、同じ部署の先輩の後押しでした。

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※営業部門の大南さん。2024年3月から育休を取得する予定です。

営業職としてキャリアを積んでいる先輩が、「子どもや家族にとって、かけがえのない時期を過ごせたことが良かった」と前向きに話しているのを聞き、自身も育休を取ることに決めたそうです。

「男女を問わず、育休とキャリアとは天秤の左右に置かれがち。育休取得は権利であり、義務ではないこともきちんと理解して、取るか取らないかを決断してほしいと思います。会社に言われたから取る(あるいは取らない)としてしまうと、のちのち後悔するかもしれません。周囲とコミュニケーションを取って、自分も家族も納得した判断ができるよう、会社として後押ししていきます」(天谷さん)

まとめ -パパ育休100%を目指す3社の挑戦

男性育休の取得が必ずしも一般的ではない状況で、3社それぞれが目の前の課題に向き合ってチャレンジを重ねている姿が印象的でした。パパ育休の輪が広がることで、「ふく育県」として、より子育てしやすい風土が高まっていきそうです。
 
3社の実際に育休を取得した男性社員のインタビューを第6回で紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。